精子・卵子提供や精子バンクに関する法整備の現状

昨今の出自を知る権利の問題や、LGBTの理解や同性婚の議論などから精子提供、精子バンクについて話題になることが多くなってきましたが法整備についてはどうでしょうか。

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提供精子・卵子で出生した子の親子関係に関する法案は成立

令和2年12月4日(2021/12/4)に成立し交付された、「生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律」では下記が定められました。
①女性が自己以外の女性の卵子を用いた生殖補助医療により子を懐胎し、出産したときは、その出産をした女性をその子の母とする。
②妻が夫の同意を得て、夫以外の男性の精子を用いた生殖補助医療により懐胎した子については、夫は民法第774 条(※)の規定にかかわらず、その子が嫡出であることを否認することができない。

第774条【嫡出の否認】
第772条【嫡出の推定】の場合において、
夫は、子が嫡出であることを否認することができる。
 
第772条【嫡出の推定】
① 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。
② 婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。

要約すると
・第三者の精子提供に同意した夫を父
・第三者の卵子提供で出産した妻を母
として定めるものです。
ポイントとしては、「夫」「妻」という言葉が使われている点。つまり法的婚姻関係にあり、絶対的男性不妊の夫婦のみに適応される非配偶者間人工授精(AID)という生殖補助医療に対して定められた法律になります。

医療機関での精子バンク利用は禁止へ

令和5年11月7日(2023/11/7)に、第25回生殖補助医療の在り方を考える議員連盟総会において、「特定生殖補助医療に関する法律案(仮称)(新規立法)(たたき台)」の改訂案が提出されました。
精子・卵子の斡旋機関は内閣総理大臣の許可を受ける必要があること、営利を目的とする精子・卵子の斡旋を禁止することの内容が含まれており、事実上海外の精子バンク企業の精子を日本の生殖補助医療で利用することが禁止されることとなりました。
今後の精子ドナー・卵子ドナーの募集に関しては国立の医療機関が担うものと思われます。

個人間での精子提供は当事者のモラルに委ねられている

法律で定められているのは医療機関での生殖補助医療に関する事柄のみです。
インターネットを通じて取引が行われている個人間の精子提供については、法律には当てはまらないため、出自を知る権利の保障、性病検査、経歴の偽り、生まれた子への付きまといなど、あらゆる懸念は当事者間のモラルに委ねられています。

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