日本の精子バンクの現状

男性不妊やFTMトランスジェンダーの夫婦、レズビアンカップル、選択的シングルマザーの方が精子提供を受けることにより子どもを授かる事例が多くなってきていますが、多くの方は「可能であれば個人間精子提供ではなく信頼できる機関から精子提供を受けたい」という思いを持っているようです。ネットで注文し、自宅で凍結精子を受け取り、自分で体内に精子を注入するという形の精子バンクが海外には存在しており利用者も多くいますが、日本には精子バンクは存在するのでしょうか?

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日本の精子バンクの現状

乏精子症や無精子症などの男性不妊が広く認識されるようになり、第三者の精子を使用した不妊治療である「非配偶者間人工授精(AID)」も広く知られるようになりました。このAIDで使われる精子は、大学病院の学生などが匿名で提供したものです。しかし、精子ドナーの匿名性を優先し、AIDにより生まれてきた子どもの「出自を知る権利」が長きにわたり蔑ろにされてきたことから、現在になってAID児の人権問題として社会問題になっています。また、日本産科婦人科学会が営利目的の精子提供への関与を会員医師に禁じていることもあり、海外の精子バンクと同じような病院にかかることなく精子を受け取れる精子バンクは日本には存在していません。
2021年4月に獨協医科大学の医師らが民間の精子バンク機関である株式会社みらい生命研究所を立ち上げましたが、2023年3月末に活動を中止しています。
また、2023年11月には「「特定生殖補助医療に関する法律案(仮称)(新規立法)(たたき台)」の改訂案が提出され、日本国内における営利を目的とした精子バンクが禁止されることとなりました。そのため、日本においては海外のような精子バンクは存在していません。

日本の精子バンクと海外の精子バンク違い

海外の精子バンクはクリオスインターナショナルやカリフォルニアクライオバンクが有名です。これらの海外の精子バンクは、精子ドナーを募集し、妊孕性や性病などが問題ない精子を凍結し販売しています。消費者は精子ドナーの人種やプロフィール、個人情報を開示しているか匿名かなどの条件から理想の精子を探して購入します。購入した精子は凍結された状態で自宅に届き、精液を融解して女性が自ら体内に注入するなどの方法で妊娠を目指します。

日本では営利目的の精子バンクが禁止となるため、海外と同じように精子を購入して妊活に用いることはできません。医療機関などが医療関係者等から精子ドナーを募り、非配偶者間人工授精(AID、IVF-D)を希望する患者に凍結精子を用いた生殖補助医療を実施するための凍結精子を保管する役割として精子バンクが存在することとなります。なお患者は精子ドナーを選ぶことは出来ず、精子ドナーの出身国や血液型など一切の情報を得ることはできません。生まれた子どもが18歳を迎え、ドナー側の了承が得られた場合にのみ精子ドナーの血液型や身長などわずかな情報を得られる可能性はあります。

非配偶者間人工授精(AID)が受けられる医療機関

2024年2月現在では以下の医療機関が「提供精子を用いた人工授精に関する施設」に登録されています。

宮城県 京野アートクリニック仙台
千葉県 東京歯科大学市川総合病院
東京都 クリニック飯塚
東京都 はらメディカルクリニック
東京都 慶應義塾大学
東京都 京野アートクリニック高輪
東京都 オーク銀座レディースクリニック
新潟県 木戸病院
新潟県 源川産婦人科クリニック
大阪府 オーク住吉産婦人科
大阪府 西川婦人科内科クリニック
大阪府 イワサレディースクリニックセントマリー不妊センター
大阪府 リプロダクションクリニック大阪
兵庫県 英ウィメンズセントラルファティリティクリニック
福岡県 セントマザー産婦人科医院
鹿児島県 竹内レディースクリニック

引用:日本産婦人科学会

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